食品工場では、製造工程においてCO2(二酸化炭素)を排出する機械が多く使用されています。CO2とは、地球温暖化の原因となる温室効果ガスの一種です。温室効果ガスにはCO2の他にも、メタン、N2O(一酸化二窒素)、フロンガスなどが含まれ、いずれも地球温暖化の要因とされています。
日本政府は、CO2排出量の削減に向けた取り組みの一環として、2050年までに「温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする=カーボンニュートラル」の実現を目指すことを目標に掲げています。カーボンニュートラルとは、温室効果ガスの排出量と吸収量を均衡させることで、実質的な排出ゼロを目指す考え方のことです。
目標を達成するには、特定の業界にとどまらず、すべての産業が脱炭素に向けた取り組みを進める必要があります。食品工場も例外ではなく、カーボンニュートラルの実現に向けた対応が求められています。
本記事では、食品工場がCO2排出量を削減した方がいい理由を踏まえた上で、食品工場で取り組みが可能な対策、具体的な企業事例について詳しく紹介します。
目次
食品工場がCO2排出量を削減した方がいい理由
昨今では、国もカーボンニュートラルの実現に向けてさまざまな施策を打ち出しています。こうした流れの中で、企業がCO2削減に向けて対策を投じることで、さまざまなメリットを受けることが可能です。まずは、食品工場がCO2排出量を削減すべき理由について、詳しく解説していきます。
- 農林水産省が、脱炭素に向けた活動を推進しているため
- エネルギーコストの削減
- 企業イメージの向上
農林水産省が、脱炭素に向けた活動を推進しているため
農林水産省は、脱炭素に向けた取り組みを行う企業の支援・推進に力を入れています。その一環として、農林水産省は食品業界における脱炭素化を加速させるため、「みどりの食料システム戦略」を策定しました。
みどりの食料システム戦略とは、2050年を目標に、食料の生産から消費までのすべての過程で環境負荷を低減し、持続可能な食料システムの構築を目指す政策のことです。戦略の中では、以下で紹介する4つの取り組みが推進されています。
画像引用:みどりの食料システム戦略(農林水産省)
- 調達……資材・エネルギー調達における脱輸入・脱炭素化・環境負荷軽減の推進(持続可能な資材やエネルギーの調達ほか)
- 生産……イノベーションなどによる持続的生産体制の構築(機械の電化・水素化など、資材のグリーン化など)
- 消費……環境にやさしい持続可能な消費の拡大・食育の推進(食品ロスの削減など持続可能な消費の拡大ほか)
- 加工・流通……ムリ・ムダのない持続可能な加工・流通システムの確立(持続可能な輸入食料・輸入原材料への切り替えなど)
農林水産省では、環境負荷低減の取り組みを「見える化」するための仕組みとして、みえるらべるの導入も推進しています。みえるらべるとは、温室効果ガスの削減・生物多様性の保全に関する取り組み状況を、ガイドラインに基づいた等級ラベルでわかりやすく表示する制度のことです。
このラベル表示により、生産者の環境配慮への努力が消費者に伝わりやすくなるため、企業のイメージ向上にも役立ちます。
エネルギーコストの削減
環境省が発表した2022年度の調査によると、食品・飲料製造業からの温室効果ガス排出量は約1,900万トンとのことです。
画像引用:2022年度の温室効果ガス排出・吸収量(詳細)(環境省)
これは産業部門におけるエネルギー排出量のうち、約5%を占める数値です。前年比では7%の減少が見られたものの、依然として削減の余地は大きく、食品・飲料製造業においては、CO2排出量のさらなる削減に向けた取り組みが求められています。
食品工場では、製造工程において多くの機械設備が稼働しており、その際に大量の化石燃料が消費されるため、結果として多くのCO2が排出されます。
こうした状況を踏まえた上で、食品工場がCO2削減を目的として、太陽光発電などの「再生可能エネルギー」を活用できる設備を導入すれば、自社でエネルギーを供給することが可能となり、エネルギーコストの抑制にも役立ちます。
企業イメージの向上
自治体や業界団体の中には、環境への取り組みを評価・促進するための表彰制度や認定制度を設けているケースも。たとえば、北海道が実施する「北海道グリーン・ビズ認定制度(※)」の場合、環境に配慮した企業・工場の取り組みを広く周知することを目的に、以下の3部門で登録・認定を行っています。
画像引用:北海道グリーン・ビズ(環境生活部 環境保全局環境政策課)
- 優良な取組……環境に配慮した取り組みを実施している事業所を広く登録し、その活動内容をPRするための部門。
- 創意あふれる取組……創意工夫に富み、他の事業所の模範となるような優れた取り組みを行っている事業所を認定する部門。(現在、募集は行っていません)
- 先進的な取組……CO2排出量の削減・産業廃棄物の再資源化などにおいて、定められた数値基準を達成した事業所を認定する部門。(現在、募集は行っていません)
優良な取組部門に登録された事業者のうち、「ゼロカーボン北海道」の実現に向けて具体的な行動を宣誓・実践している企業は、「ゼロカーボン・チャレンジャー」として登録され、取り組み内容のPRなどが積極的に行われています。
自治体や業界団体による表彰・認定を受けることで、企業の環境配慮への姿勢が広く認知されるようになり、自社の知名度・ブランドイメージの向上にも繋げることが可能です。
※北海道グリーン・ビズ認定制度……北海道内に所在し、事業活動を行っている事業所のうち、環境に配慮した取組を継続して実施している事業所が登録できる制度のこと。
食品工場でできるCO2削減対策
CO2の削減に向けて、食品工場ではどのような対策が可能なのでしょうか。本項目では、食品工場で実施できる具体的なCO2削減対策について紹介します。
- 再生可能エネルギーを使用する発電方法に切り替える
- 廃熱を有効活用する
- 遮熱シートを屋根へ施工する
- 遮熱シートを機械へ施工する
再生可能エネルギーを使用する発電方法に切り替える
機械の稼働によって発生するCO2排出量を抑えるためには、化石燃料への依存を減らし、環境負荷の少ない発電方法を導入する方法が有効です。その具体的な取り組みの1つに、発電手段を化石燃料から「再生可能エネルギー」へと切り替える方法が挙げられます。
再生可能エネルギーとは、太陽光・風力・水力・バイオマスなど、自然の力を活用して生み出される持続可能なエネルギーのこと。再生可能エネルギーの導入により、消費電力の一部を自家発電で賄うことが可能です。
さらに、この働きによってエネルギー使用量を抑えられるようになり、光熱費・CO2排出量の削減といった効果が期待されます。
関連記事:カーボンニュートラルに向けて企業でできることとは?カーボンニュートラルの具体的な取り組み、事例について紹介
廃熱を有効活用する
CO2の排出量を抑えるには、製造の過程で排出される廃熱を有効活用するのもひとつの手段です。廃熱とは、機械設備の稼働時に生じる未利用の熱エネルギーであり、通常は外部へ放出される余剰熱を指します。廃熱を再利用する主な方法には、以下のような技術が挙げられます。
- ヒートポンプ……熱(ヒート)をくみ上げる(ポンプ)装置であり、低温の熱を高温側へ移動させる仕組みを採用している。
- ガスコージェネレーションシステム……発電時に発生する廃熱を、冷暖房・給湯などに活用する、分散型のエネルギー供給システムのこと。
ヒートポンプの仕組みは、熱エネルギーを運ぶ冷媒(代替フロン)、冷媒に圧力をかけるコンプレッサ、冷媒を膨張させる膨張弁、そして吸熱用・放熱用の2つの熱交換器という4つの要素で構成されています。
画像引用:廃熱回収(富士電機)
ヒートポンプの働きによって、温度の低い場所から高い場所へと熱を移動させることが可能となり、従来は廃棄されていた廃温水・廃熱を再利用することが可能です。
ガスコージェネレーションシステムを利用した場合、都市ガスを燃料としてガスエンジン・ガスタービン・燃料電池などを用いて発電を行うと同時に、発電時に生じる排熱を有効活用し、蒸気・温水を生成できます。
参考画像:ガスコージェネレーションシステム(一般社団法人 ガスコージェネレーションシステム)
発電と同時に発生した廃熱は、生産プロセス・給湯・冷暖房のエネルギーとして有効活用することが可能です。
遮熱シートを屋根へ施工する
食品工場では、建物の強度を上げる目的として、一般的に金属製の折板屋根(凹凸のある形状の屋根)が多く採用されています。折板屋根は、夏の強い日差しを受けて高温になりやすく、蓄積された熱が室内へと伝わることで、室温の上昇を招きます。室温が高くなると冷暖房の効率が低下し、結果としてCO2の排出量が増加します。
CO2の排出量を抑えるには、太陽から発生する熱を反射する「遮熱シート」を屋根に施工する方法が有効です。遮熱シートとは、輻射熱を反射する金属製アルミシートのこと。輻射熱とは遠赤外線によって伝わる熱であり、人体の体感温度を上昇させる要因のひとつです。
屋根に遮熱シートを施工することで、日射による輻射熱を反射し、室内の温度上昇を防ぎます。その結果、冷暖房の使用を抑えることができ、間接的にエネルギー消費量・CO2の排出量を低減することが可能です。
工場で多く用いられることの多い折板屋根には、スカイ工法の導入が効果的です。スカイ工法とは、輻射熱の反射性能に優れたスカイシートを屋根に施工する工法のこと。
シートを屋根に直接貼り付ける工法のため、工場の稼働を止めることもありません。さらにシート折板屋根の接合部(ジョイント部分)をシートで覆うことができるので、雨漏り対策にも効果を発揮します。
遮熱シートを機械へ施工する
食品工場に設置された機械からは、人体の体感温度を上げる輻射熱が発生しています。機械に遮熱シートを施工することで、輻射熱の影響を軽減し、室温の上昇を防ぎます。
乾燥炉やオーブンなどの大型機械には、遮熱シートを裁縫して繋ぎ合わせることができる「フィット工法」が最適です。フィット工法とは、機械から放出される熱を効果的に遮断するために開発された特許技術のこと。

不燃性のシートをテント状に縫製し、機械全体をすっぽりと覆うことで、輻射熱を効率よく遮断することが可能です。フィット工法の導入により、機械のエネルギー効率や、室内に設置された冷暖房の空調効率が向上します。この働きによって、生産性の向上や光熱費の削減が期待できる他、CO2排出量の低減にも繋げることが可能です。
企業のCO2を削減する取り組み事例を具体的に紹介
国内の食品工場の中には、すでにCO2排出量の削減に向けた取り組みを積極的に進めている企業も少なくありません。本項目では、CO2削減対策を実施している食品工場の具体的な企業事例を紹介します。
- 太陽光発電システムの導入(岩崎食品工業)
- ガスコージェネレーションの導入(六甲バター株式会社)
- サーモバリアスカイ工法の導入(富士高フーヅ工業株式会社)
太陽光発電システムの導入(岩崎食品工業)
岩崎食品工業は、麺類の製造・販売を手がけている食品メーカーです。同企業では、2020年に電気代の削減、工場の遮熱による職場環境の改善、そして地域への貢献を目的として、屋根に太陽光発電システムを導入しました。2つの工場に太陽光発電システムを設置したところ、以下のような効果が得られた(※)とのことです。
- A工場 電力消費削減率7.14% 削減額1,103,311円
- C工場 電力消費削減率36.81% 削減額488,974円
現在、同企業では会社の正面・主力商品である「肉汁うどん」のパッケージに、「再生可能エネルギーで製造されたうどんである」旨を明記することを検討しています。こうした環境配慮型の取り組みは、企業の社会的責任を示すだけでなく、ブランドイメージの向上にも繋げることが可能です。
※数値の結果は2021年11月~2022年12月実績のもの。
参考記事:【導入事例】埼玉県の岩崎食品工業が二つの工場に自家消費型太陽光発電設備を設置|“再生可能エネルギーを使った麺”(株式会社 恒電社)
ガスコージェネレーションの導入(六甲バター株式会社)
六甲バター株式会社は、国内におけるプロセスチーズ市場でトップシェアを誇る食品加工メーカーです。同企業では、987kWのガスコージェネレーションシステムを導入し、発電に加えて、発生した排熱を工場内の熱需要に有効活用しています。
画像引用:カーボンニュートラル実現に向けた関西企業等の取組事例(近畿経済産業局)
導入後は、温水を工場内の洗浄、蒸気を製造工程などへ効率的に活用することで、エネルギーの無駄を抑えることに成功しました。さらに、電力とガスの使用比率を従来の「電気:ガス=4:1」から「電気:ガス=1:1」へと見直したことで、エネルギー全体の利用効率が大きく向上しました。
スカイ工法の導入(富士高フーヅ工業株式会社)
富士高フーズ工業株式会社様は、グミを中心とした菓子製品のOEMメーカーです。グミキャンディのような製品は、温度管理が品質に直結するため、工場内の環境整備は極めて重要です。
同企業では、輻射熱を発生する機器が多数稼働していたことから、グミキャンディの冷却工程に大きな負荷がかかっていました。その対策として、夏の高温対策・製品品質の維持を目的に、工場の屋根へスカイ工法を導入されたとのことです。
スカイ工法の導入後は、温度計の数値からも明確にわかるほど、室温が低下したそうです。さらに、室温が快適に保たれるようになったことで、グミキャンディの冷却工程にかかる負荷が大幅に軽減されたとのことでした。
スカイ工法は、暑さの主因である輻射熱を反射する働きによって、工場内の温度管理のみならず、製品の品質保持にも効果を発揮します。同企業によるスカイ工法の導入効果に関するインタビューは、YouTubeにて動画を公開しております。ぜひ、こちらも併せてご覧ください。
参考記事:スカイ工法
CO2の削減には、遮熱シート「サーモバリア」の施工がおすすめ
「省エネ効果の高い遮熱シートを探している」という場合であれば、弊社で施工が可能な遮熱シート「サーモバリア」がおすすめです。サーモバリアは、アルミ純度99%の素材を使用しており、輻射熱に対して高い効果を発揮します。
サーモバリアを屋根・壁・機械などに施工することで、室内の空調効率が向上し、間接的に光熱費の削減に繋げることが可能です。その結果、電気代の節約はもちろん、CO2排出量の削減効果も期待できます。
弊社では、工場における冷暖房の負担軽減による電気代削減額・CO2削減量などを、事前にシミュレーションすることが可能です。施工前に「どれくらいの効果が見込めるか」を具体的に把握できるため、安心して導入をご検討いただけます。
関連記事:工場に遮熱シートを施工するメリットとは?効果、施工箇所、施工事例をご紹介
まとめ
食品工場における、CO2の削減対策は主に以下のとおりです。
- 再生可能エネルギーを使用する発電方法に切り替える(太陽光発電など)
- 廃熱を有効活用する(ヒートポンプ・ガスコージェネレーションシステムなど)
- 遮熱シートを屋根へ施工する
- 遮熱シートを機械へ施工する
食品事業者がCO2の削減対策に取り組む場合、省エネ設備の導入・再生可能エネルギーの活用は有効な手段ですが、初期投資や運用コストが高くなる可能性も……。導入コストを抑えたいとお考えの事業主様は、カーボンニュートラル活動を支援している遮熱シート「サーモバリア」を導入してみてはいかがでしょうか。
サーモバリアは、省エネ・カーボンニュートラルの推進に貢献する暑さ対策として有効なため、補助金制度の対象となる可能性も高いです。過去の事例では、工場における快適な職場環境づくりに向けた取組などを支援する「新時代開拓支援補助金(※現在は募集を行っておりません)」制度の利用によって、補助金が下りた例もあります。
補助金制度は自治体によって有無・条件・公募期間が異なるため、申請を検討される際は各自治体の公式ホームページで最新情報を確認しておくことをおすすめします。
屋根・機械にサーモバリアを施工することで、冷暖房の効率が向上し、結果として省エネ・CO2排出量の抑制に繋げることが可能です。CO2の削減に取り組まれている事業主様は、遮熱シートを導入して、夏の暑さ対策・省エネ・CO2の削減などに役立ててください。





