鋳物(いもの)とは、高温で溶かした金属を、砂などで作った「鋳型(いがた)」という型に流し込んで冷やし固めた製品のことです。また、鋳物を制作する工場のことを「鋳造工場」とも呼ばれています。鋳物業界では、溶解炉で鉄、アルミ・銅などを高温で熔解し、電気やガスを多く使用するためCO2を多く排出しています。
CO2は温室効果ガスの一種であり、地球温暖化の要因のひとつとされています。政府は現在、温室効果ガスの排出量と吸収量の均衡を図ることで、実質的な排出ゼロを目指す「カーボンニュートラル」の実現に向けた政策を推進しています。その他にも、資源エネルギー庁の公式サイトでは、炭素に価格を付けて排出者の行動を促す「カーボンプライシング」の導入が具体化しつつあることが公表されています。
こうした政策の動向を踏まえると、今後ますます脱炭素化への取り組みが加速し、CO2排出量の多い機械を数多く設置する鋳造工場においても、カーボンニュートラルの実現に向けた対応が一層求められることとなるでしょう。
本記事では、鋳造工場がCO2削減対策に取り組む理由、具体的な対策について紹介します。
鋳造工場がCO2削減に取り組むべき理由
近年、国が積極的にカーボンニュートラルの推進に取り組んでいることから、企業もCO2削減に前向きに取り組むことで、さまざまなメリットを享受できるようになっています。まずは、鋳造工場がCO2削減に取り組むべき理由について、具体的に紹介します。
- 溶解工程で、多大なエネルギーコストを要するため
- 企業イメージの向上
溶解工程で、多大なエネルギーコストを要するため
日本鋳造機械工業会が公開した資料「鋳造機械からみた鋳物工場のCO₂削減提案(平成23年3月)」によれば、資料中の”ある鋳物工場”の年間CO₂排出量は約9,450トンに達し、生産1トンあたりでは約860kgが排出されていると報告されています。
その中では、CO2排出量が最も多いプロセスは溶解工程であり、全消費エネルギーの60%以上を占めていると紹介されています。鋳造工場の溶解工程では、主に石炭コークス(化石燃料)をエネルギー源とするキュポラが用いられます。
画像引用:高炉およびキュポラ(一般社団法人 日本工業炉協会)
キュポラとは、石炭コークスの燃焼熱を利用して鉄を溶かす溶解炉のことです。キュポラは大量の連続溶解に適しているという利点を持つ一方で、燃料に化石燃料が必要であり、さらに膨大なエネルギーコストを必要とするため、CO2排出量が多くなるというデメリットを抱えています。
参考資料:鋳造機械からみた鋳物工場のCO₂削減提案(日本鋳造機械工業会)
参考資料:カーボンニュートラル/ゼロエミッションでサーキュラーエコノミーを実現するクリモトダクタイル鉄管へ(国土交通省)
参考記事:高炉およびキュポラ(一般社団法人 日本工業炉協会)
企業イメージの向上
国が脱炭素化を推進する動きに伴い、鋳造工場が積極的にCO2対策へ取り組むことは、企業の環境意識の高さを示す有効な手段となり、結果として企業イメージの向上にも大きく貢献します。
すでに東証プライム上場企業では、2027年3月からGHG(温室効果ガス)排出量の開示を義務化することが決定しています。対象となるのはサプライチェーン全体の排出量であり、製造業の場合は自社工場からの排出だけでなく、原材料や部品の調達・生産・物流・販売、さらには製品の使用や廃棄に至るまで、すべてのプロセスにおけるCO2排出量を報告する必要があります。
画像引用:グリーン製品の需要創出等によるバリューチェーン全体の脱炭素化に向けた検討会(環境省)
鋳造工場では、一次請け・二次請け、さらには孫請けとして上場企業に原材料や部品を納入するケースも少なくありません。上場企業と取引を行っている場合、納入先から排出量データの提出を求められる可能性が高く、対応できなければ取引停止に至るリスクもあります。
こうした機会損失を防ぐためにも、鋳造工場は早急にCO2対策へ取り組むことが必要不可欠だと言えるでしょう。
鋳造工場で対策できるCO2削減方法
鋳造工場では、さまざまな対策を投じることでCO2の排出量を抑えることが可能です。ここでは、鋳造工場で対策が可能なCO2対策について具体的に紹介します。
- 高効率熱交換機の採用
- 再生可能エネルギーを使用する
- IoTを活用し、消費電力を可視化する
- 遮熱シートを屋根へ施工する
- 遮熱シートを機械へ施工する
高効率熱交換器の採用
画像引用:高効率熱交換器の導入(環境省)
熱交換器とは、高温の物体から低温の物体へ効率的に熱を伝えるための機器を指します。代表的な種類には、主に以下のようなものが挙げられます。
- 多管式熱交換器……太い円柱状の胴体に多数の細い円管を配置し、胴体(シェル)側の流体と円管(チューブ)側の流体の間で熱交換を行う装置のこと。
- プレート式熱交換器:複数の伝熱板を積層し、その間に高温流体と低温流体を流すことで熱交換を行う、高効率な機器のこと。
- 蓄熱式熱交換器:蓄熱材料に高温・低温の流体を交互に接触させ、蓄熱と放熱を繰り返すことで熱交換を行う装置のこと。
多管式やプレート式の熱交換器は、金属の管・板を介して間接的に熱を伝える仕組みを採用しています。こうした高効率な熱交換器を導入することで、燃料消費量の削減やCO2排出量の低減に貢献します。
参考資料:高効率熱交換器の導入(環境省)
参考記事:多管式熱交換器(日阪製作所)
参考記事:プレート式熱交換器の仕組み~コンパクトでメンテナンスが簡単なプレート式熱交換器を解説!(MDI)
再生可能エネルギーを使用する
再生可能エネルギーとは、太陽光・風力・水力・地熱・バイオマスなど、自然界で繰り返し再生されるエネルギーのことです。化石燃料の代わりに再生可能エネルギーを光熱費として利用することで、電力の自給が可能となり、光熱費を大幅に削減できます。
再生エネルギーを活用する設備には、主に太陽光パネルがあります。太陽光パネルとは、日射による光エネルギーを電気に変換して発電を行う装置のことです。工場の屋根に設置することで、自家発電が可能となり、省エネ効果を得ることが可能です。
太陽光パネルは、電気を貯めて必要なときに使用できる蓄電池と併用する方法がおすすめです。蓄電池を組み合わせることで、日中に発電した余剰電力を蓄えておき、夜間など発電できない時間帯に使用できるため、より高い省エネ効果が期待できます。
IoTを活用し、消費電力を可視化する
画像引用:IoTとは(NTTdocomo)
IoTとは「Internet of Things」の略で、世の中にあるあらゆるものをインターネットに接続する仕組みを指します。製造現場では、各種機器や取り付けたセンサーをネットワークに接続し、そこで得られたデータをクラウド上で分析することで、次のような効果が期待できます。
- 製造状況の分析
- 機器の故障予測
- 電力のリアルタイム監視
鋳造工場においても、製造プロセスの中でIoTを活用し「電力のリアルタイム監視」や「データ分析」を行うことで、不要な稼働を削減し、生産効率を高めることが可能です。
遮熱シートを屋根へ施工する
工場の屋根に遮熱シートを設置することで、室内の空調効率が向上し、省エネ・CO2排出量の削減といった効果が期待できます。遮熱シートとは、輻射熱を反射する金属製のアルミシートのことです。遮熱シートは、体感温度を上昇させる輻射熱を防ぐ効果があるため、建物の屋根に施工することで夏の暑い時期でも快適に過ごせます。
工場の折板屋根には、弊社で施工が可能な「スカイ工法」がおすすめです。スカイ工法とは、輻射熱の反射性能に優れたスカイシートを屋根に直接貼り付ける工法のことです。スカイ工法は、折板屋根の接合部をシートで覆うため、雨漏り対策にも効果を発揮します。

遮熱シートを機械へ施工する
鋳造工場の場合、溶解工程で活用するキュポラなどの機械に遮熱シートを施工することで、機械から放出される輻射熱を防ぎ、室内の温度上昇を抑えます。キュポラや乾燥炉のような大きな機械には、弊社の「フィット工法」が有効です。
フィット工法とは、遮熱シートをテント状に裁縫し、機械全体を覆うように設置する施工方法のことです。裁縫によるシートの連結が可能なため、キュポラや乾燥炉などの大型機械にも施工できます。
鋳造工場が実施した主な事例
省エネやCO2対策によっては、設備・工事費用に多大なコストがかかるケースも……。導入を検討する際には、「費用対効果が得られるのか」といった点も踏まえて判断することをおすすめします。ここでは、CO2対策を実際に導入した鋳造工場の事例を具体的に紹介します。
- SDGsの達成に向けて、太陽光パネルを設置(株式会社キャストアンドー)
- Iotの導入で、歩留まり率を2%向上(中央可鍛工業株式会社)
- 鉄を溶かすキュポラ(溶鉱炉)に施工し、生産性アップ
SDGsの達成に向けて、太陽光パネルを設置(株式会社キャストアンドー)
株式会社キャストアンドーは、大正3年(1914年)創業の鋳物製造会社です。鋳造工場では、これまで製造工程で発生する物質の影響により屋根が腐食するリスクがあり、その強度の問題からソーラーパネルの設置は困難とされてきました。
同社では、敷地内にある2棟の工場のうち条件が整った1棟に、2023年6月に太陽光パネルを276枚設置しました。その結果、自家消費電力量の2.65%削減を達成しています。
参考記事:コスト面と環境貢献を両立できる電力メニューを提案していただきました。脱炭素に取り組むうえで「欠かせないパートナー」となることを期待しています(enere)
Iotの導入で、歩留まり率を2%向上(中央可鍛工業株式会社)
中央可鍛工業株式会社は、自動車部品・産業機械用部品・オフィス家具を「粗加一貫」で製造・提供するものづくり企業です。同社では、カーボンニュートラルへの取り組みの一環として、工場の電力使用量や生産設備の「見える化」を目的にIoTを導入しました。
IoTセンサーを機器に取り付け、取得した情報を活用することで、鋳込み時の重量や注湯時間をデータ化し、最適な注湯量や時間を算出。その結果、歩留まり率を2%改善することに成功しました(鉄2,000トンのうち2%分を削減)。蓄積された価値あるデータを活用することで、生産性の向上と省エネの両立を実現しています。
参考記事:中央可鍛工業のカーボンニュートラル取り組み事例(kyohokai)
鉄を溶かすキュポラ(溶鉱炉)に施工し、生産性アップ
鉄を溶かすキュポラ(溶解炉)に遮熱シートを設置する「フィット工法」を施工することで、室温上昇の防止(作業員の負担軽減)・生産性の向上といったメリットが得られます。
実際にフィット工法を施工した企業様の声によると、フィット工法を施工後に放射温度計で測定した結果、キュポラ上部(フィット未施工部分)は約230℃であったのに対し、胴体部分(フィット施工部分)は約25℃に抑えられていたそうです。さらに、フィット工法を導入した後には、キュポラから溶け出す鉄の量が増加し、生産量が約13%向上したという成果も得られています。
関連記事:鉄を溶かすキュポラ(溶鉱炉)に施工
サーモバリアが省エネに役立つ理由
脱炭素化に向けて企業で取り組みを行うなら、カーボンニュートラル活動を支援している「サーモバリア」を選択する方法がおすすめです。輻射熱を反射する「サーモバリア」は熱対策に特化した製品として、企業の「カーボンニュートラルへの取り組み」を支援しています。
サーモバリアとは、輻射熱を反射する性能を持つ金属製アルミシートのことです。高純度なアルミ箔を使用したサーモバリアは、その「優れた反射性能」が特徴です。サーモバリアを屋根に施工することで、日射から発生する輻射熱を抑制し、夏の暑い時期も快適に過ごせます。
サーモバリアは放射率が低く、物体から放出される熱を抑える(閉じ込める)特性も備えています。冬の寒い時期は、室内の熱が外に逃げるのを防ぐ働きによって、室温低下を防ぎます。
さらに、機械に施工することで、省エネ・生産性の向上といった効果も期待できます。
まとめ
鋳物産業は産業界の中では規模の小さい分野ですが、製造工程で膨大なエネルギーを消費するため、光熱費の増大・CO2排出量の増加といった課題を抱えています。とりわけ、エネルギー消費量の約6割を占めるキュポラへの熱対策は、大幅なCO2排出量の削減に有効です。
弊社の「サーモバリア」は、遮熱シートを裁縫することでキュポラ全体を包み込むことができ、省エネやCO2削減に高い効果を発揮します。さらに、生産性の向上や作業員の負担軽減といった副次的な効果も期待できます。低炭素化の実現に向けて、サーモバリアを屋根や機械に導入し、企業の「カーボンニュートラル化」へとつなげていきましょう。








